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なぜ本作がハウス・オブ・ペインとエヴァーラスト(ハウス・オブ・ペインの元フロントマン)のアルバムのなかで最高作と言えるのか? というのも、どちらも単独ではベスト盤をリリースしていないからだ。
アイルランド系アメリカ人のラップ・グループ、ハウス・オブ・ペインの代表曲はシングル曲「Jump Around」で、この曲はすばらしい瞬間を味あわせてくれる。「Jump Around」はこれまで作られた中でおそらくもっともエネルギッシュかつ病みつきになりそうなヒップホップ・トラックで、ヒップホップ嫌いの人にも愛されるタイプの曲。これをプロデュースしたのはサイプレス・ヒルのDJマグスだが、エヴァーラストがマグスの力を借りるのをやめると、あっという間にハウス・オブ・ペインは形をなさなくなった。さらにエヴァーラストのソロになってからのキャリアも似たようなパターンをたどった。ヒット曲「What's It Like」はクラシックなモダンロックの1曲だったが、その他のトラックではラッパーから、ヒップホップ仲間と群れるブルージーなフォークシンガーへと姿を変え、統一性がなくなっている。
「Black Coffee」と鮮やかな「Black Jesus」では、ヒルビリー(ブルーグラス)とホームボーイ(ラップ)をひとつ(ヒックホップ)にまとめ上げる独特の才能を見せつけている。それでもエヴァーラストがこのチャンスをものにすることはなかった。体調不良と自滅的行為とエミネムとの負け戦とが悲しいまでに重なったことで、戦闘意欲が薄れてしまったのだ。また残念なことに本作ではサンタナとのすばらしい共演(「Put Your Lights On」)を耳にできない。このベスト盤は2組が1枚で聴けるお買い得なアルバムなのかは疑問だが、この2組がそろったことで上質のアルバムとなっているのはたしかだ。(Jake Barnes, Amazon.co.uk)