解説
「刑事マガジン」編集長 用田邦憲
テレビ50年――幾多の名作ドラマが世に送り出されてきた。その中でも、【刑事ドラマ】というジャンルは、われわれの心をとらえて離さない。ここに挙げたのは、テレビ草創期以来、現在までに放映されてきた人気刑事ドラマのごく一部である。
犯罪捜査ドラマの草分け『ダイヤル110番』『部長刑事』を経て、60年代に入ってスタートした『七人の刑事』『特別機動捜査隊』が、集団刑事ドラマの礎となった。そして、それらのフォーマットをさらに発展させる形で登場したのが『太陽にほえろ!』であった。この作品以降、レギュラー刑事それぞれに個性を与え、刑事たちと事件、犯罪者との関わりを描いていくという新しいスタイルが確立されたのである。こうして幕を開けた刑事ドラマの新時代においては、『太陽にほえろ!』のスタイルを踏襲しつつ、新機軸を盛り込んでいくことで、実に数多くの作品が誕生した。70年代後半〜80年代前半のテレビ界は、空前の刑事ドラマ・ブームを迎えることになる。
やがて時代の趨勢は、重厚な人間ドラマを描いた『Gメン'75』や『大都会』『特捜最前線』から、テレビの枠を超えたアクションを実現した『西部警察』へと移行していく。80年代後半には、台頭してきたトレンディ・ドラマ群と歩調を合わせるように、軽妙な会話 とスタイリッシュなキャラクターの魅力を前面に押し出した『あぶない刑事』が登場。それと時を同じくして、ロングランを誇っていた『太陽にほえろ!』『特捜最前線』が終了したことは象徴的であった。
そして90年代。かつてのように一年を通して続く刑事ドラマこそなくなったものの、『はぐれ刑事純情派』は15年間にわたって継続されている。さらに、当初はわずか3ヶ月の放映ながらも圧倒的な支持を受けてシリーズ化、あるいは映画化された『警部補・古畑任三郎』や『踊る大捜査線』の成功は、テレビにおいて【刑事ドラマ】というジャンルが健在であることを見事に示したと言えるだろう。テレビ50年の歴史を支えてきた刑事たちは、今日もまた、どこかで活躍を続けているのである。
今回発売されるCDは、刑事ドラマが最も熱かった70年代〜80年代におけるヒット作品で使用された曲目の中から、ファンに人気の高い曲を中心に厳選した、まさに【刑事ドラマソング・ベスト】と呼んで差し支えない一枚である。本盤の企画・制作にあたっては、先頃創刊されて話題となった、刑事ドラマ専門誌「刑事マガジン」編集部(辰巳出版)の全面協力を得た。相次ぐCSでの再放送、DVD−BOXの発売など、70年代〜80年代の刑事ドラマへのリスペクト・ブームは高まる一方である。そうした流れの中、最も望まれる【決定盤】として、本盤をすべての刑事ドラマ・ファンに捧げたい。思い出の刑事たちの勇姿が幾多の名曲とともに甦るのなら、これに勝る喜びはない。
刑事ドラマよ、永遠なれ――。